NFCアンテナ設計・共振調整・解析&センサ搭載無線モジュール開発
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NFCリーダライタのアンテナの共振周波数を、センスコイル(PICC等を含みます)とネットワークアナライザを用いて測定する場合に注意する必要がありますので、以下に説明していきます。
図1に、NFCリーダライタ(NFCコントローラ)のアンテナ周辺回路を示します。
図2(a)に、センスコイルとネットワークアナライザを用いた測定の構成を示します。
センスコイルに流れる電流によって磁界が発生し、その磁界がアンテナ(コイル)に鎖交して誘導起電力が発生します。
そのときの等価回路が、図2(b)のようになります。
図2(b)の等価回路の誘導起電力(電源)を左側に描き換えると、図2(c)のようになります。
NFCリーダライタの出力端子Vout1とVout2は、動作していないときは Hi-Z(ハイインピーダンス)になりますので
Openとみなすことができ、図2(d)の回路となります。これがセンスコイルとネットワークアナライザを用いてS11を測定しているときの等価回路です。
図3と図2(d)を比較すると、明らかに異なる回路ですので、共振周波数が同じになることはない場合が多いと考えられます。
次に、Spiceシミュレーションで確認してみます。
例として、ここではアンテナインダクタンスLa=2.0μH、寄生抵抗2×ra=2×0.5Ωの場合を考えます。
図4は、NFCリーダライタが通信動作時の等価回路です。部品の定数は、上記設計仕様のときの計算値です。
図5に、上記設計仕様の場合のセンスコイルとネットワークアナライザを用いたS11測定時の等価回路を示します。
図6に、図4と図5の回路のアンテナに流れる電流の周波数特性を示します。IA, IBそれぞれのピークの周波数が共振周波数です。
センスコイルとネットワークアナライザで測定したときのアンテナに流れる電流の周波数特性は、通信動作のときにアンテナに流れる電流の周波数特性とは一致せずズレが生じます。
ここで説明しましたように、このままの方法ではNFCリーダライタの出力端子Vout1とVout2からみた共振周波数を測定することができませんので、工夫が必要となります。
しかし、アンテナ周辺回路(LCフィルタ&マッチング回路)の検査等のように、共振周波数の正しい値よりもばらつき範囲を評価する場合には、この方法を用いることが可能だと思います。(ただし、検査等でこの方法を用いる場合でも、このズレがあることを理解して利用することが重要と考えます。)
2020.04.09